2021.10.12
日本HPの超小型ワークステーション「HP Z2 Mini G5」は、デスクトップ型ならではの高性能でありながら単行本サイズ。持ち歩きも簡単なのでテレワークにも最適だ。そこでBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やVR(バーチャルリアリティー)界の第一線で活躍する建築クリエーターの桑山優樹氏が、遠隔BIM作業やVRとの連携などを徹底チェックした。
日本HPの超小型ワークステーション「HP Z2 Mini G5」を手にする桑山優樹氏。デスクトップ型の高性能を持ちながら単行本サイズなので、自宅に持ち帰ってのテレワークにも最適だ
「日本HPの超小型ワークステーション『HP Z2 Mini G5』を初めて見たとき、単行本と同じくらいのサイズだったので、これがデスクトップ機とは信じられませんでした。にもかかわらず、大容量のBIMモデルを難なく扱え、高画質のレンダリングもサクサク行えるのは驚きました」と、桑山優樹氏は開口一番に語った。
三重・名張市内にオフィスを構える桑山氏は、寺院などの瓦の施工を展開する桑山瓦の代表取締役兼職人でありながら、BIMやVRなどの制作でも第一線で活躍している。さらに中央工学校OSAKAで特別講師を務め、CGやVRの教育にも携わるというマルチタレントだ。
本棚の一段があれば、モニターとZ2 Miniは難なく収まるので、テレワークも場所を取らない
今回、Z2 MiniにはBIMソフトの『Archicad』とレンダリングソフト『Twinmotion』、そしてVR製作用ソフト『Unity』をインストールした。そしてBIMによる設計業務をテレワーク化できるかを徹底検証したのだ。
「まず、寺院の瓦ふき替え工事をシミュレーションするための約500MBものBIMモデルを読み込み、拡大・縮小やウオークスルーなどを行ったところ、サクサクと動きました。そして4K画質で毎秒60コマで10秒間の動画を作ってみたところ、Z2 Miniはわずか6分30秒で終了しました。以前使っていたパソコンは、作業中に落ちてしまったのです」(桑山氏)
膨大な数の瓦を3Dモデル化し、寺院の瓦ふき替え工事をArchicadでシミュレーションする桑山氏。BIMモデルのサイズは約500MBもある
Z2 Mini G5の本体は縦・横216mm×厚さ58mmで、重量はわずか2.18kgだ。超小型のため、データセンターなどで使われる「42U」サイズのラックなら、56台も置くことができる。あの薄いブレードサーバーよりも小型なのだ。
今回、検証に使用したマシンは、CPUがインテルXeon W-1290P型、GPUはNVIDIA Quadro T2000、メモリーは32GB、そしてデータストレージとして512GBのHP Z Turbo Drive(M.2のSSD)を搭載している。
しかし、まだまだ機能は拡張することができ、CPUはXeon W-1290P、GPUはNVIDIA Quadro RTX3000、メモリーは64GB、SSDは2TBまで対応できる。
「ノート型ワークステーションは、インターフェースの数にどうしても制限されてしまいますが、Z2 Mini G5の側面には豊富な端子が付いています。例えばモニター用のDP端子が3つも付いていますので、トリプルモニターによる作業も簡単にできます」と桑山氏は語る。
このほかUSBポートはType-Aが4つ、Type-Cが2つあるほか、HDMIや有線LANポート、さらには無線LANやBluetoothまで付いているので、他の機器との接続には事欠かない。
側面にはモニター用のDP端子が3つ付いているほか、様々な種類のUSB端子などもある
小さなボディーながら、機能拡張はまだまだ可能だ(左)。ボディーの四隅が斜めにカットしてあるデザインはスマートで、通風性や冷却性も高めている
「あと、気に入っているのは、筐体(きょうたい)のデザインです。四隅が斜めにカットしてあるスタイルはカッコよく、オフィスから自宅に持ち帰って居間に置いても違和感がありません。さらに通風がよいので、本棚などに置いても冷却性はバッチリです」と桑山氏は言う。
BIM業務のテレワークには、いろいろな方法がある。最もシンプルなのは、会社に置いてあるZ2 Mini G5を自宅に持ち帰って使う方法だ。
自宅での作業が難しい場合は、テレワーク拠点やネットカフェ、そして場合によっては客先などにZ2 Mini G5をかばんに入れて運び、そこでモニターやキーボード、マウスを借用して作業を行うこともできる。
単行本サイズのZ2 Mini G5なら、かばんに入れて運ぶことも簡単だ
テレワーク拠点やネットカフェ、客などにあるモニターやキーボード、マウスを拝借してBIM作業を行うことも簡単だ
しかし、会社によってはマシンの持ち帰りを禁止している場合もある。そんなときに便利なのが、Z2 Miniをインターネット経由で遠隔操作できる日本HPの「HP ZCentral Remote Boost」というソフトウェアだ。
このソフトウェアがあれば、会社に置いた日本HP製のワークステーションやパソコンを、自宅などから遠隔操作できるのだ。そのため、データは一切、会社から持ち出さないまま、設計などの作業だけを遠隔で行うことができるのだ。
今回は三重県名張市にある桑山氏のオフィスの仕事をテレワークで手伝う東京在住のアルバイト学生に協力してもらい、ArchicadやTwinmotionによるBIM業務が可能かどうかを確かめた。
「東京のパソコンから遠隔操作で三重にあるArchicadのBIMモデルを開いてもらいましたが、手元のBIMモデルを扱っているように問題なく操作できました。さらにTwinmotionでBIMモデルをリアルタイムレンダリングし見てもらいましたがこちらも問題はありませんでした。描画解像度も変更が可能なので通信状況や描画の重さなどに合わせて調整が可能でした」と桑山氏は語る。
三重県内のBIMモデルは、「HP ZCentral Remote Boost」を使うことにより東京からの遠隔操作で問題なく扱えた
「『HP ZCentral Remote Boost』のメリットは、遠隔操作を行う側のパソコンは高性能でなくてもよいというところです。そのため、自宅にはインターネットにつながるパソコンさえあれば、リモートでZ2 Mini G5の性能を生かした作業が行えます」(桑山氏)。
VR制作を手がける桑山氏のオフィスには、メインマシンとして日本HP製のデスクトップ型ワークステーション「Z4」が鎮座している。メモリーは64GB、そしてGPUにはVR用の「Quadro RTX 5000」を搭載している。
桑山氏のオフィスにあるメインのワークステーション「Z4」
VR作品を高い生産性で作るには、こうした設備も必要だが、客先での設計確認や設計修正では、モバイルワークステーションでも十分だ。
例えば、日本HPの“VR Ready”のモバイルワークステーション「Z Book Create G7」と、高画質VRゴーグル「Reverb G2」の組み合わせだ。
「Reverb G2は片目あたりの解像度が2160×2160ピクセル、視野角は約114度もあります。VR映像上の小さな文字も読めるので、従来のVRとは解像度が大幅に進化しています」と桑山氏は言う。
モバイルワークステーション「ZBook Create G7」と高画質VRゴーグル「Reverb G2」によるVR体験
「Reverb G2のよいところは、頭の動きを検知する外部ビーコン設置を必要としない『インサイドアウト型』であることです。ビーコンの設置や撤収が必要ないため、休み時間の少ない授業などでも使いやすいです」と桑山氏は言う。
今回、使用したZ2 Mini G5はBIMのテレワーク業務に十分、使えるもので、その価格は約40万円だった。
「BIMの業務で使うワークステーションは、大体、40万~50万はしますから、コストパフォーマンスはかなりよいのではないでしょうか。小型・軽量で、遠隔操作も簡単にできるので、一般のデスクトップ型ワークステーションに比べて稼働率も高くなります。それを考えると、Z2 Mini G5は非常にコスパのよい選択と言えるでしょう」と、桑山氏は語った。
【本記事は 建設ITワールド が制作しました】