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2023.02.01

「SDGsウォッシュ」に陥る企業が見落している決定的な視点

社会貢献的発想から脱却し、新たな市場づくりへシフトせよ

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現場を知れば、ビジネスへの取り組みが変わる

―― そういったことができる人材の育成はどうしたらいいでしょうか。

谷本氏 Z世代の人たちがこれからを引っ張っていってくれるはずです。彼らは、SDGsの課題についての感度が非常に高い。十代の頃から学校やメディアでこういった話を聞いてきているし、子どもの頃から地球環境問題を肌で感じて育ってきていますから。SDGsに関する取り組みを考えていくうえで、まずは現場を知ってもらうことから始めることはとても大切だと思います。

わたしたちは、貧困の問題があることは知っていても、世界の本当にシビアな状況を見たことはあまりないと思います。現場を見て「私たちの会社に何ができるのか」と考える。現場を見ることによって考え方や物事の見方が変わってくると思います。「現地企業や政府と連携したら、こんなことができるのではないか」「NGOと連携したらどうだろうか」と考え始めるはずです。外務省やJICAなどが、企業のそういった動きを支援しているので、それらの制度を利用しながら、現場を見て何ができるかを考えることも大事だと思います。

Riccardo Mayer/shutterstock

企業のトップは、会社全体の中から強み・弱みを考えながら意思決定をしていく役割を担っています。ですから、若い人たちの背中を押して、彼らが見てきたことをもとに「なぜ、私たちの会社がこういった問題を解決するために、次のビジネスに取り組むのか」を社内で議論するきっかけにすればよいのではないでしょうか。

―― 経営者やリーダー層は、他にどういったことが求められるのでしょうか。

谷本氏 まず一つは、多様な人が集まる場を作り連携する、コラボラティブなリーダーであることですね。

社会的な課題に対して「自社の経験や技術力を発展させて何ができるか」を議論する際に、一つの企業の人材と資源だけでなんとかしようと思っても限界がある。だからこそ、経済団体や関係性の強い企業と一緒に取り組んだり、NGOや大学と連携したりしながらプログラムをつくることが大事になってきます。

また、新しい何かを生み出していく時には、今までのように、日本人で健常な中年の男性だけで議論していても何も変わりません。ですから、女性や外国人、ハンディキャップのある人、外部のNGOの人や研究者など、様々な立場の人が集まって意見を出し合いながら考えていく必要があります。そうすることが結果的に、オープンで持続的なイノベーションを生み出すことにつながるからです。そのためにも、さまざまな立場の人たちと連携できる力を持ったリーダーが求められています。

求められる「新しいリーダーシップの形」

―― 新しいリーダー像を考える上で、参考になるような例はありますでしょうか。

谷本氏 例えば、パタゴニアの創始者であるイヴォン・シュイナード氏は、以前「死んだ地球の上でビジネスはできない」と発言をしました。これは、地球が壊れてしまっては、株主も顧客も従業員もいなくなってしまうということを意味します。パタゴニアは「サスティナブルな取り組みは、自分たちがすべきことだ」とはっきり語っています。こういったビジョンを語り、引っ張るリーダーシップも必要だと思います。

sharptoyou/shutterstock

そして、先ほど言ったように、若者を後押し(エンパワー)する力も重要です。経営陣が課題の重要性などを語りつつも、10年後、20年後の会社の進む方向を考えるときには、若手にしっかり権限を委ねたり、予算を与えたりといったことをしてみる。そういった思い切ったことをしないと、新しいことは何も出てきません。

ビジョナリーで、コラボラティブで、エンパワリングなリーダーであること。これが大事だと思っています。

―― SDGsの取り組みを一過性のものにせず、継続していく上でのポイントを教えてください。

谷本氏 10年後、20年後に自分の会社は「どのようにありたいか」を考えることですね。為替の変動や国際的・政治的な議論によって1〜2年単位で変わる部分ではなく、「自分たちが何を目指すのか」を定めること。それこそが大事なのだと思います。

そういったビジョンを語れるトップになるためにも、経営者は外に出て、国際会議などに参加することをおすすめします。欧米には実務家や研究者が一緒になって議論する場がたくさんあります。そこで登壇する欧米のCEOは誰もがビジョンを語りますし、互いに刺激を受けつつ、連携してさまざまなことに取り組んでいます。そういった場所で起きている確かなムーブメントを、日本企業のトップのみなさんにも、ぜひ肌で感じていただきたいですね。

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※本記事は JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです



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