2022.05.11

サイドシール加工とデジタル印刷で実現する環境型パッケージ製造

株式会社マルタカ 遠藤社長インタビュー

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株式会社マルタカは、創業以来、包装パッケージのあらゆるニーズに応えることで確かな実績を築いてきたパッケージコンバーターである。緑豊かな千葉県の流山工業団地に本社を構え、サイドシール加工をビジネスの主力として、環境に配慮したサステナブルな物づくりにも力を入れている。近年、環境問題が取り沙汰され、パッケージ・ラベル業界に対する風当たりは強い。いかに無駄をなくし、環境に優しい印刷を提供できるかは各社が取り組む重要テーマのひとつだろう。マルタカの得意とするサイドシール加工を始め、生分解性樹脂を内側に使用したコンポスト可能な紙コップの印刷など、HP Indigoデジタル印刷機で実現する環境型印刷について、遠藤氏に話を聞いた。

サイドシール製袋加工というビジネス

―― 創業から現在に至る経緯を教えてください

「株式会社マルタカは、髙橋加工所として1966年に創業し、当初は輸出用室内履きスリッパの外袋を手掛けていました。1973年にYシャツなどの繊維を包装するビニロンフィルム、レジ袋の加工などを始め、1985年にグラビア印刷機を導入して、製袋だけではなく、上流の印刷工程もできるようになりました。

1990年、会社名称を『皆で輪を持って向上する』という意味合いを持たせ、株式会社マルタカに変更。翌年に、多種多様な産業を集めた流山工業団地ができ、弊社も当時流山市に展開していた5つの工場をここに集中化しました。その際に、現在の主力商品となる『サイドシール』という製袋加工を始めたのです。

私が社長に就いたのは、2014年のことですが、同年にドライラミネーター設備を導入し、2017年に東京営業所を開所、2018年にHP Indigoデジタル印刷機を導入しました。現在は、グラビア印刷、デジタル印刷、ラミネート、スリッター、製袋加工のトータルカンパニーとして、サイドシール加工を主としたパッケージを広く提供しています。

―― サイドシール加工とはどのようなものですか?

サイドシールというのは、1枚のフィルムを折り返し、袋の両サイドを熱で溶断するというものです。プラ封筒、透明封筒などとも呼ばれるもので、透明度が高く、光沢やハリがあり、商品を美しく陳列できるため、袋入りマスクなどの日用品や文具、さらにDM用の透明袋など幅広く使われています。レトルト食品の袋などに使われる三方シール袋と間違われることも多いのですが、三方シール袋は2枚の重ねたフィルムの底と側面の三方を圧着シールして貼り合わせたもので、シール強度が高く密閉性がありますが、サイドシール袋より高価になり、それぞれの特性に合わせた用途で使い分けられています。

現在、弊社は日用品雑貨のサイドシールで東日本最大級の設備規模となるサイドシール加工機23台を保有しており、小ロットから大ロットまでの印刷から製袋までを一貫して請け負っています。マルタカのサイドシール加工は、文具などの日用品雑貨の包装に使われるものが最も多く、全体の7割近くを占めています。あらゆる日用品雑貨の袋を加工しているので、あまり浮き沈みがなく、外的要因の影響を受けにくいといえます」

コロナ禍におけるビジネスへの影響

―― コロナによって変わったことや、ビジネスへの影響はありましたか?

「コロナ禍では、訪問ではなくリモートでの活動が増えました。実物の袋の色やサイズを見て頂くので、オンライン会議の画面上で確認が難しい場合には訪問をしています。やはり営業活動はしにくくなり、営業が会社にいる時間が長くなりました。東京営業所は、時間差通勤やリモートワークなど臨機応変に対応していますが、工場は人がいないと稼働できませんから通常運用です。ただ、色の立ち合いは人数を制限したり、緊急事態宣言下では立ち合いをやめたり、そういった変化はありました。

売上的には、コロナ禍でマスクの袋やペーパータオルの袋など、衛生用品の需要が一時的に増加しました。特に、袋入りのマスクは、様々なメーカーが出すようになったので2021年6月辺りまでは一気に増えましたが、その後は箱買いが増え、現在は一段落している状況です。一方、観光・イベント関連商品は大きく減少しました。イベントのDMを入れる透明袋、イベント用手提げ袋、ホテルの歯ブラシの袋などです。アミューズメントパークに提供している袋も、一時期は入場制限などの対応により、注文が減少しました。衛生用品が増えたことでイベント需要のマイナスを相殺していますが、同じサイドシール袋でも、発注者であるお客様の業種によってビジネス状況は大きく異なります。とにかく人寄せになるようなイベントやキャンペーンは、企画が持ち上がっても延期や中止になるなど、ブランドオーナー側としても葛藤が多かったようですね。

また、原材料価格は間違いなく高騰しています。どの業界も値上げせざるを得ないと思いますが、フィルムはともかく、インクや物流の値上げを商品価格に転嫁するのはなかなか難しいと感じています。最近特に、物流は人件費も上がっているのではないでしょうか。いま、流山の周辺には物流倉庫が続々と開業していて、インターチェンジから工業団地に来るまで片側にずらりと物流倉庫ができています。千人くらいの求人が出たり、倉庫で働く人を観光バスで送迎したりと、ものすごい勢いです。今は観光の仕事がない分、そちらにバスを使っているのでしょう。それだけコロナ禍ではネット通販が成長し、配送量が増えているということだと思います。

コロナ禍では、少しずつですがホームページを見て問い合わせをして下さる新規のご相談も増えています。それに伴い、ホームページもリニューアルし、新しい加工を紹介したり、サンプルの写真を載せたり、こまめに情報発信していきたいと考えています。同時に、検索エンジンで上位に表示させるSEO対策にも取り組んでいく予定です」

HP Indigo 20000デジタル印刷機導入の背景

―― HP Indigoデジタル印刷機導入の背景について教えてください。

「HP Indigoデジタル印刷機の導入は、7年程前に展示会で見たのがきっかけです。当時はまだ導入企業も少なく、グラビア印刷機と比較すると速度が遅いこともあり、3年程検討を重ね、2018年にHP Indigo 20000デジタル印刷機の導入に踏み切りました。

日用品雑貨というのは実は小ロット・多品種のものが多いのです。弊社では、全体の36%を2000メートル以下のジョブが占めています。例えば、ボールペンだと、黒、赤、青などの色数、0.5mm、0.7mmといった太さの違いなど、それだけの掛け合わせで種類があるわけです。グラビア印刷機だと版替えが必要で、種類が多くなれば版の保管も大変です。デジタル印刷機であれば、小ロット多品種を簡単に印刷できるということが決定打となりました。

HP Indigo 20000デジタル印刷機では、小ロット・多品種の日用品雑貨を生産することが多いのですが、幅広ロールモデルのため、小さなパッケージだけではなく、学校に貼るような大きなポスターや横断幕、カレンダーなどを印刷することもあり、ある意味実験設備のような側面も兼ね備えています。データがあれば気軽に印刷できるので、グラビア印刷ではやらないような類の印刷を見出していくなど、今後より一層デジタル印刷機を活用できればと考えています」

環境配慮素材への印刷:堆肥化できる生分解性紙コップ

現在、大阪府、吹田市、株式会社ガンバ大阪、三菱ケミカル株式会社、日本HP、そしてマルタカを含む多くの自治体や企業が連携しながら、循環型経済の実証実験を進めている。それは、Jリーグサッカークラブのガンバ大阪のホームゲームで販売するドリンクに生分解性の紙コップを使用し、回収して堆肥に再資源化するというプロジェクトだ。

通常、紙コップの内側には耐水性を持たせるために非生分解性樹脂であるポリエチレンでラミネート加工がされている。そのラミネートに、生分解性樹脂であるBioPBS™ を用いることで、紙コップ全体がコンポスト設備や土壌で分解可能になるのだ。BioPBS™ は、三菱ケミカル株式会社が開発した植物由来の生分解性樹脂で、自然界の微生物によって水と二酸化炭素に分解されるため、自然環境への負荷が少ないのが特長だ。

実際には、使用済の紙コップをスタジアム内で回収し、食品残渣発酵分解装置で食品残渣物などと一緒に1次発酵させる。1次堆肥は回収され、さらに堆肥場で2次、3次発酵させると、農作物の栽培に利用できる堆肥として生まれ変わる。コンポスト設備に投入した紙コップは、4日後には跡形もなくなっているから驚きだ。

マルタカは、本プロジェクトの参画企業と連携し、この⽣分解性紙コップの印刷をHP
Indigo 20000デジタル印刷機で担当している。

―― 新しい発想から生まれた生分解性紙コップの生産に携わっていかがでしたか?

「HP Indigoデジタル印刷機に搭載されるHPエレクトロインキは、懸念物質や重金属を含まず、欧州の堆肥化試験規格に準拠していて、ある一定のインキ量まではコンポストが可能だということです。そういった背景や高い生産性が求められることから、HP Indigo 20000ユーザーである弊社にお声掛け頂きました。ですが、当社はこれまで紙コップに印刷した経験はありません。全く新しい原反ですので、最初の1本目は少し苦労しました。

当初はラミネートする前の薄い紙に印刷するのかと思っていたのですが、届いた原反は既にラミネートがされた状態でした。つまり、ほぼ紙コップそのままのしっかりと厚みのある素材で、どのくらいのテンションで印刷したら良いかなど情報がなかったため、巻き直しをしての試行錯誤となりました。その辺が難しかったですね。

堆肥化できる紙コップは、生分解性樹脂やHPエレクトロインキが合わさってこそ実現する新しい環境配慮型製品ですから、他のスポーツやチームでも積極的に展開されると良いのではないかと思います」

コンバーターとして取り組む環境対策

―― 他にも環境について意識されている活動などがあれば教えてください。

「弊社は、『環境と調和した豊かな循環型社会を目指す』という方針のもと、サステナビリティを意識した取り組みを実施してきました。2010年、本社工場にてグリーンプリンティング認定を取得し、2012年にISO9001、翌年にISO14001を取得しています。もちろん、日常的には省エネやフィルムの分別、リサイクルも実施しています。

設備面では、ドライラミネート機から排出されるVOC (揮発性有機化合物)を、触媒式燃焼処理装置にて水と二酸化炭素に酸化分解し、無害・無臭化する装置を導入しており、燃焼時に熱した空気はドライラミネート機に取り込み乾燥用の熱風として再利用しています。

直近では、『ちばSDGsパートナー』という、SDGsの推進に向けた企業の取り組みを後押しする制度に登録されました。これは、千葉県の企業や団体が、環境・社会・経済の3側面においての取り組みを推進する上で、具体的な内容と目標を提出し、千葉県が審査するというものです。

お客様の意識も時代と共に変わってきているのか、バイオマスフィルムの袋やボタニカルインキの使用など環境に関連するお問い合わせも増えていると感じます。ただ、どうしても環境配慮素材はまだ価格が高いので、見積を出すと『じゃあいいか』となってしまうのが現状です。それも今後は少しずつ変わっていくのではないかと思います。

写真)環境に優しい紙ベースの素材にHP Indigoで印刷したパッケージサンプル

グラビア印刷機は、印刷機を止めては色を合わせるという色合わせの工程でロスが出たり、VOCの問題があったりと環境面でのデメリットもあります。それに比べて、デジタル印刷機は版がなく、廃棄物も少なく、インキも環境に優しい。お客様にとっても、適正量を作るということは、在庫を抱えるリスクを最小化する上でメリットは大きいはずです。様々な原反を使えますから、ガンバ大阪の生分解性紙コップのような取り組みも可能です。生分解性フィルム、単一素材フィルム、リサイクル素材、クラフトペーパーなど、環境に優しい資材を積極的に活用して、グリーン製品の開発に努め、サステナブルな印刷需要に応えていけたらと思います」

―― 今後の方針についてお聞かせください

「これからはどうしても環境を考えて物づくりをしなければなりません。弊社に何ができるかと考えた時、やはり環境にいいインクやフィルムをどんどん提案してお客様と一緒に作っていきたい。その中でも、『HP Indigoデジタル印刷機 × サイドシール加工』で、デジタル印刷の強みを活かした適量生産モデルの提案や、可変デザインのパッケージを手掛けていきたいと思っています。

HP Indigoデジタル印刷機を導入済みのコンバーターが年々増えつつある中で、弊社の特徴を出して差別化していかなければなりません。現在は、『HP Indigoデジタル印刷機 × サイドシール加工』という組み合わせができるコンバーターはほとんどいません。HPデジタル印刷機で三方シール加工をするところは多いようですが、サイドシールは価格的なメリットがあるので、そこを強みとして、HP Indigoデジタル印刷機の機能を使用した軽包装の様々な加工に挑戦していきたいです。例えばイベントなどで、ユニークなコードや可変デザインを印刷して製袋加工をするなど、積極的に提案して展開できればと思います」

包装は商品と消費者をつなぐ架け橋だ。一方で、商品が使用された後は不要となり廃棄されてしまうのが包装の宿命でもある。商品のメッセージを伝え、衛生的に保ち、ダメージから守るという大切な役割を果たすことはもちろんのこと、今後は環境負荷を低減するための最大限の努力が各社に問われるだろう。近年、企業を評価する際にESG経営が重視されるようになり、対応に追われるブランドオーナーも多い。まずは無駄を出さないために、使われずに廃棄される過剰在庫をなくすことが推進されている。環境について早くから考え、設備投資をしてきたマルタカは、お客様のご要望にデジタル印刷機の適時適量生産で応えることで、そんな時代の波にも乗れるだろう。そして、HP Indigoデジタル印刷機 × サイドシールによる環境型印刷を戦略として掲げ、これから増えゆくサステナブルなパッケージの需要に応えていってほしい。きっと、それは社会をよりよくするための推進力となるはずだ。

株式会社マルタカ

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