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HP Workstation 導入事例紹介
東京工業大学

 

世界有数のスーパーコンピューター「TSUBAME2.0」のアプリケーション開発にワークステーションを活用

東京工業大学

HPCの分野は世界的な技術革新を広げる革新的な取り組みが日々続けられている。一度は勢いを失いつつあった日本の取り組みも、ここ数年復活を見せており、ときおり一般ニュースでも取り上げられるほどの大きな話題を呼ぶことも多くなっている。今回はHPC Wire誌においてHPC Hat Trickと世界第1位という評価を得ているスパコン「TSUBAME2.0」を開発・保有する東京工業大学の学術国際情報センター 高性能計算システム分野 助教(理学博士) 丸山直也氏(以降、丸山氏)に話を伺った。

■TSUBAMEイメージ
■TSUBAMEイメージ

  スパコンはサイエンスを進めるための「道具」

学術国際情報センター 高性能計算システム分野 助教(理学博士) 丸山直也氏
学術国際情報センター
高性能計算システム分野 助教
(理学博士) 丸山直也氏

「学術国際情報センターでは、東京工業大学と国の共同利用センターとしてスーパーコンピューター(スパコン)の設計や運用を行っています」と語る丸山氏。同センターでは、スパコン以外にも学内のネットワーク、ITインフラ系も担当している、いわば企業でいうところの情報システム部にあたる機関だ。

大きな特長としては、2010年秋に導入されたスパコン「TSUBAME2.0」を保有していることが上げられる。同コンピューターは、2011年11月発表の「Top500」において世界5位としてランキングされている。現在、独立行政法人理化学研究所 計算科学研究機構が保有するスパコン「京」に、国内トップの座を譲りはしたものの、日本内外を含めて世界有数の性能を誇るスパコンである事実は変わらない。

「最初に稼働を始めた頃に、TOP500で4位になったのですが、そこで大きく注目を集めたのだと思います。システム全体をフル稼働させる最も過酷な評価で世界第4位にランキングされたわけです」と語る丸山氏。同氏いわく、ベンチマークだけでなく、スパコンの存在意義にはもっと大切なものがあるのだという。
「稼働から約1年経って、コンピューターを使って本当に何ができるのかというところで、成果がどんどん上がってきました」と丸山氏。2011年の11月に実際のサイエンスにおいて大きな貢献をしたスパコンを選出するゴードンベル賞において、「京」と共にTSUBAME2.0が同時受賞を果たしたことは広く知られている。「スパコンはサイエンスを進めるための道具ですから、それにいかに大きく貢献できたかが重要なのです。単純に速いというのも、それはそれで興味はあるのですが、実際に道具として貢献できたかという部分で高く評価されたのが、この1年を振り返っての成果になります」と、丸山氏は語る。
さらに「この世界は進歩が激しいので、我々のTSUBAME2.0が現時点でTop500の世界5位にランキングされていますが、今後は日本だけでなく、アメリカや中国といった国でも新しいものを作ってくるはずです。当然、そういう新しいテクノロジーによるスパコンと比べれば性能的に見劣りすることは当たり前になってしまうのです。そうなる前に如何に成果を残すかが重要なのです」と、丸山氏は語った。

そうした技術の進歩や、競争原理を活かしてスパコンを含むHPCの分野は日々成長していく。1年というと短い期間かと思われる方もいるかもしれないが、1年もの間トップクラスの能力を発揮し続け、実際のサイエンスに大きく貢献できているという事実こそが大切なのだ。「1年で成果を上げられたというのは、もともと設計を始めたのが2〜3年前になりますから、そのときから先を見据えて進めてきたことが成果を結んだのだと思います」と語る丸山氏の表情は明るい。

  GPUコンピューティングが省スペース・省エネルギーを実現

GPUは、CPUから計算データを受け取り、より多くの演算コアで高速に処理を行います。

TSUBAME2.0のハードウェア的な特長といえば、スパコン専用の特殊なハードウェアではなく、インテル® Xeon®プロセッサーを搭載した汎用的なHP ProLiantサーバーをベースに構築されている点だ。さらに各サーバノードそれぞれにNVIDIA Tesla GPUコンピューティングカードが搭載されているところにある。計算にCPUだけでなく、GPUも使用するハイブリッドのGPUコンピューティングを効果的にシステムとして組み込んでいるのだ。

「必ずしもすべての計算にGPUが使われるわけではないのですが、多くの場合に使うことが可能です。さらにいうと、GPUが使える範囲がどんどん広がっているのが、基礎研究の成果でもあって、私たち東工大でもやっていますし、世界各国でも同じように研究に取り組んでいます」と丸山氏は語る。

大規模クラスター型スパコンのTSUBAME2.0を構成しているサーバはHPとの共同開発によって設計されたもので、通常計算用として1408台のサーバが使われる。各サーバノードにはNVIDIA Tesla M2050がそれぞれ3ユニット搭載され、全体で4224ユニットものGPUカードが稼働することになる。

広がりを見せているGPUコンピューティングだが、その背景には何があるのだろう。「今後、スパコンで一番難しいのが消費電力をより少なく設計するところです。効率よく電力を使うためにGPUを使う、というのがひとつのキーポイントになっています。ある意味、多少CPUと比べると使いづらいところもあるのですが、そこはソフトウェアでカバーしながら、という方法もあります。スパコンに有望と考えられるアーキテクチャは他にも多数あり得るはずですが、GPUを中心としたスパコンの構築が、今後の重要な方向性の一つであることは間違いない所だと思います」と丸山氏は語る。

実際に東工大の学舎内に設置するというスペース的な制約や、消費できる電力に限界があることも理由となり、TSUBAME2.0には省スペース、省電力を実現するための設計思想があらゆる部分に取り入れられている。「我々もTSUBAME2.0を見学される方に対応することがよくあるのですが、あの小さなスペースでこれだけのものを作れるのかと驚かれて帰られる方が大勢いらっしゃいます」と、丸山氏は語る。

TSUBAME2.0の前身であるTSUBAME1.0と比較し、計算能力は30倍に対して消費電力はわずか3割の増加に留まっているというデータがある。もちろん、当時のハードウェア環境と現在のものとを単純に比較することは難しいが、それでも性能向上に対して消費電力の増加がわずかだという点は、優れた設計とGPUコンピューティングの効率的な運用ができている証明のひとつにはなるはずだ。

TSUBAME1.0とTSUBAME2.0の計算性能・消費電力比較
TSUBAME1.0とTSUBAME2.0の計算性能・消費電力比較
TSUBAME1.0とTSUBAME2.0の設置面積比較
TSUBAME1.0とTSUBAME2.0の設置面積比較

  あらゆる分野の研究利用をカバー

TSUBAME2.0は、一般的なスパコンとは違い、様々な分野での応用を可能としているのも特長だ。「基礎的な研究分野が多いのですが、そこから派生したものといえば非常に多岐に渡ります。分かりやすい例としては、津波シミュレーションあたりですね。気象状況の拡散シミュレーションなどもおこないます」と丸山氏。その他、車をデザインするときの空気の流れをシミュレーションしたり、機器の破壊のシミュレーションなどももちろんおこなっている。

「宇宙の星をシミュレーションしたりもします。どうやって宇宙が作られてきたのかをシミュレーションするのですが、これは実際に検証することはできません。そこでスパコンを使って、数万年という単位のシミュレーションをおこない、仮説として実際の宇宙観測と照らし合わせて新しい発見をするという方法です。単純に結果を得るだけでなく、コンピューターを使って理解を得る、いわば補完する形で使われることもあります」と丸山氏は語る。

このほか、タンパク質を解析して新しい薬の開発をしたり、特定の病気に効く薬を発見に役立てるなど、TSUBAME2.0の高い計算能力を活かした研究はあらゆる範囲をカバーしている。「大学のサービスですから、様々な研究をしている方がいます。ですから、特定の研究分野の方だけが使うわけではないのです。CPUに加えてGPUも搭載しているTSUBAME2.0は、幅広い用途に使えるように設計していますが、そこが一番難しい部分でもあるのです」と丸山氏。

砕波シミュレーションイメージ
砕波シミュレーションイメージ
タンパク質とリガンド間の相互作用解析イメージ
タンパク質とリガンド間の相互作用解析イメージ

実際に幅広い用途での利用を実現しているTSUBAME2.0は、民間企業向けのリソースも用意している。民間企業が、CUDAでコーディングしてソフトウェアを持ち込み企業用の枠を使用して研究開発に利用する例もあるのだという。「一般の企業の方で、インハウスのソフトウェアをTSUBAME2.0で動かすケースもあります。既存のスパコンと違う部分も多いですから、お試しの規模で使うことができる部分も大きいようです。そのあと本格的にスパコンを自社に導入するといったシナリオもあるようです」と丸山氏は語る。お試しのリソースとはいえ、それだけでもかなりのパフォーマンスがあるので、様々な研究開発機関にとってはよい指針を得ることも十分可能だといえるだろう。

  ソフトウェア開発に最適なワークステーション

TSUBAME2.0の特長として、GPUコンピューティングや応用範囲の広さが挙げられることはこれまで述べてきた通りだ。では、同スパコンで使われるソフトウェアについてはどうなのだろう。「市販されている商用のソフトウェアが利用できます。MATLAB等の数値解析からCAEソフトウェアまで導入しています」と丸山氏。このほか、一般企業の利用枠では、エンジニアリング関連業務用のソフトウェアも使われるが、そうした既存のソフトウェアばかりでなく、TSUBAME2.0の特長を活かしたソフトウェア開発も学術国際情報センターでおこなっている。

今回導入したHP Z800 Workstationは、そうしたシーンで活用されている。「ワークステーションのメインの用途は、TSUBAME2.0向けのソフトウェア開発です。TSUBAME2.0は多数の方が利用していますから、ソフトウェア開発は手元にあるワークステーションでおこない、実際にそれを使って大規模な計算をするときはTSUBAME2.0を使う。そういう使い分けです」と丸山氏は語る。TSUBAME2.0のリソースは常にあらゆる研究や企業枠で使われている。貴重なリソースと時間を無駄にしないために、ソフトウェア開発はワークステーションでおこなうのだ。

「このワークステーションには、NVIDIA社製の Tesla C2075をデュアル構成で搭載しています。CPUも同じインテル® Xeon®プロセッサーです。基本的なスペックは同じなので、TSUBAME2.0と同じ環境をクライアント上で再現していると言えます。開発する上でも、実際に計算をおこなわせるTSUBAME2.0に合わせた環境ですし、同じHP製でもあるので親和性も高く、非常に使いやすいです」と丸山氏。GPUコンピューティング環境をミニマムではあるが、デュアルTesla構成によって再現したり、CPUパワーやリソースを確認したりする上でも、開発用ワークステーションでは似たようなスペック構成であることが、効率化に繋がるというわけだ。

ソフトウェア開発を行う丸山氏と開発用ワークステーションHP Z800 Workstation。 NVIDIA Tesla C2075をデュアルで搭載したパワフルなワークステーションだ。
ソフトウェア開発を行う丸山氏と開発用ワークステーションHP Z800 Workstation。 NVIDIA Tesla C2075をデュアルで搭載したパワフルなワークステーションだ。

HP Z800 Workstationの導入前は、自らパーツをアセンブリしたコンピューターを用意し、クラスター環境を構築して開発環境を作っていたという丸山氏。「台数が多いので、一台一台にコストが掛けられませんでした。安価に作ることを目的としていましたが、GPUを複数搭載するとシステムがハングアップする現象が何度か発生してしまいました。HP Z800 Workstationの場合は安定して使えて、開発に際して問題が発生することはいまのところありません」と丸山氏も開発環境にワークステーションを加えたことに対して手応えを感じている。

NVIDIA Tesla C2075 NVIDIA Tesla C2075 コンパニオンプロセッサは、GPUコンピューティング用に構築されています。
各ボードに448個の演算コアを持ち、従来のワークステーションと比較し、アプリケーションのパフォーマンスを劇的に向上させます。

Teslaコンパニオンプロセッサを追加することにより、エンジニア、デザイナー、コンテンツ制作の専門家は、ご使用のワークステーションに1TFlops以上の計算能力を追加できます。

  次世代TSUBAMEも念頭にHPC界全体を牽引する

東工大の学術国際情報センターでは、スパコンを4、5年周期で更新しているのだという。「TSUBAME2.0も2014〜15年には更新されて、おそらくTSUBAME3.0になると思います。その際には、またその当時の最先端技術を駆使して、東工大の学術国際情報センターにスパコンが入ることになります」と丸山氏は語る。先ほども触れたが、設置スペースや消費電力にある程度制約があるが、GPUコンピューティングを軸にこれを克服してきた、同センターの優れた開発力なら、それを乗り越えた上で新たな可能性を感じさせてくれるスパコンを発表してくれるだろう。「限られたリソースの中で光るものが作れればと思っています」と語る丸山氏の表情が実に頼もしい。

「学内だけでなく、様々な企業でハイエンドなスパコンを使った研究が進めば、それだけスパコン市場が活発になりますから、ハイエンドなサーバや開発用のワークステーションに対する投資も大きくなってくると考えています。その結果、自分たちが使えるコンピューターが更に進歩するわけですから、研究者や企業、コンピューターベンダー間での良い相乗効果が得られると期待しています。長い目で高度なエンジニアリングを支援していきたいですね」と語る丸山氏の言葉どおり、実際に将来的な取り組みとして日本としてもプラス材料として捉えており、国からの支援も一部受けているのだという。

また、ハードウェアや使い方提案だけに留まらず、東工大ではGPUコンピューティング研究会を主催し、人材育成や教育にも取り組んでいる。「かれこれ10数回を数えている研究会です。2012年2月にも開催しましたが、実際に東工大に来ていただいた方へ向けてGPUプログラミングを含んだ講習会を開催しています。参加は無料で学外の人でも企業の人でも、どなたでも参加できます」と語る丸山氏。同研究会には日本全国各地から毎回100名近くが参加するのだという。「実際に導入してみようと試している人の話も伺います。GPUを搭載したワークステーションやサーバが簡単に購入できる時代なので、よい題材になっているのだと思います。GPUコンピューティングが始まり出した頃から開催している研究会なので、この技術の普及にはある程度貢献できたと考えています」と語る丸山氏の表情は明るい。

少ない電力と限られたスペースで高度な計算をおこなうことを可能とした、TSUBAME2.0と東京工業大学 学術国際情報センター。これからも世界を牽引する優れた開発力と、それを活かしきる技術力で、大きく社会貢献してくれるはずだ。

学術国際情報センター 高性能計算システム分野 助教(理学博士) 丸山直也氏

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本ページに記載されている情報は取材時(2012年3月)におけるものであり閲覧される時点で、変更されている可能性があります。
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