日本HPは毎年、全国の企業や自治体、教育機関がどのような課題を抱えており、その悩みの解消にどのようなソリューションがマッチするかを紹介する「HPパートナーロードショー」を全国複数の都市で開催している。2018年の大きなテーマは、昨今何かと騒がしい「セキュリティ」だ。それも、ただガチガチにセキュリティを強化するのではなく、いかに使い勝手やコストといった要素と両立させるかという観点で、HPの製品群の活用法を解説していくことがポイントだ。ここでは、6月12日に広島で開催されたロードショーの模様を紹介する。

●深刻なセキュリティ対策の「副作用」、あらためて端末での対策に目を

 日本年金機構がサイバー攻撃を受け、大量の個人情報が流出した事件をきっかけに、政府機関や自治体のセキュリティ対策は大きく問い直されることになった。特に総務省は「自治体セキュリティ強靱性モデル」を打ち出し、二要素認証やインターネット分離、ファイルの無害化といったさまざまな対策を実施することを地方自治体に求めた。


 だが、基調講演を行ったシンクライアント総合研究所取締役、シニアコンサルタントの奥野克仁氏によると、自治体の現場ではその「副作用」が大きな問題になっているという。アプリケーションがさくさく使えなくなったり、ちょっとしたデータ移動にも煩雑な手続きが必要になったりする一方で、業務は進めなければいけない。そこで「自分の端末やスマートフォンを持ち込んで使ったり、無害化をしないでダイレクトに送ったりと、使いにくい環境を避けて抜け穴を探るようになった。情報漏洩を防ぐために対策を強化した結果、業務に支障が生じ、柔軟な働き方ができないという問題が生じている」(奥野氏)。教育現場でも状況は似たようなものだという。


 また、ある調査によれば、2017年第1四半期には4.2秒に1個のペースで新たなマルウェアが登場している*。万一感染して情報漏洩が起きたり、長期間事業が停止してしまったりすると影響は甚大だ。かといって、Webやメール、クラウドなど全てに網を張って対策するのは、予算の面でも人手の面でも無理がある。そこで「100%防御するよりも、侵入されることを前提に、いち早く検知し被害を極小化するための対策が求められている」と奥野氏は説明した。
*出展:GData, Malware Trends 2017, 2017


 特にポイントとして挙げたのが、多くの人が常に使っている「端末」のセキュリティだ。奥野氏は「システム全体のセキュリティ対策は負荷が大きいので、まず端末から見直してみてはどうだろうか」と提案。例えば「Webブラウザを仮想的に独立させ、タブを閉じれば無効化するようにすれば、それほど神経質にならず安心して必要なサイトにアクセスできるようになるのではないか」と語りかけた。


 強靭化に取り組んでみたはいいけれど、仮想デスクトップはコストがかかるし、二要素認証はユーザーが嫌う。ネットワーク分離でアプリケーション利用は遅くなる。とはいえ、サイバー攻撃対策は待ったなしの状況だ。さらに政府は「デジタルファースト法案」によって各種申請の電子化を提唱しているほか、文科省も「第三期教育振興基本計画」を策定し、やるべき事はますます増えていくだろう。


 そんな中、あえてもう一度端末に目を向けて対策してみては、というのが奥野氏の提案。神奈川県庁や薩摩川内市、鹿児島県宇木市といった、これまでに支援した先進的な自治体の取り組みを紹介し、無線LANの代わりにLTE閉域網を組み合わせた安全な通信もポイントになると述べた。


 多くの自治体や教育委員会は、セキュリティ対応の必要性を認識しつつも予算や人材不足に悩まされている。また、対策をガチガチにするあまり、本来の業務や授業のための時間が確保できなくなるといった副作用が生じては、元も子もない。


 奥野氏はそんな悩みを知る専門家の立場から、「脅威を強調する国やベンダーの言葉を鵜呑みにして高額なソリューションを導入する必要はなく、PCで対策をとることも可能ではないか。LTEで閉域網につなぎ、Office 365やOneDriveといったさまざまなクラウドサービスを組み合わせることで、ICTコストの削減とセキュリティ対策を両立させ、かつ働き方改革に向けた新しい環境作りができるのではないか」と提言した。

●用途に応じて選択肢がさらに増えたHPの製品群

 続くセッション「気になるHPの最新・イチオシ製品を動画でご紹介」では、日本HPパーソナルシステムズ事業統括クライアントソリューション本部の福井孝文氏が、デモ動画を交えながら、PCやプリンターの新製品を紹介した。


 HPの法人向けノートブックPCには価格重視の無印シリーズ(HPシリーズ)の他、性能と価格のバランスを取った「Proシリーズ」、デザインやサポートも含め全てにおいてハイエンドの「Eliteシリーズ」という3つのシリーズがあり、予算や用途に応じて選択できるようになっているのがポイント。2018年後半のモデルからは、安全にインターネットに接続できるLTEモジュールを搭載した機種が続々追加される予定だ。


 もう1つのポイントは、PC本体と組み合わせて利用できる周辺機器やソリューションが充実していることだ。新規格のUSB Type-Cに対応し、ノートブックPCを外に持ち出してモニターや無線LANなど、さまざまな周辺機器と接続する際に便利な「トラベルドック」も展開している。


 その上で福井氏は、「HP ProBook 430」とトラベルドックの組み合わせや、本体にプライバシーフィルタ機能の「HP Sure View」を搭載した「EliteBook 830」、ワンタッチでSkypeによるミーティングが行える「EliteBook 850」といった特色あるモデルを紹介した。さらに、高速大容量のデータ転送が可能なThunderbolt 3に準拠し、4Kディスプレイを2系統出力することも可能な「HP Thunderbolt Dock G2」が6月から販売されている。


HP ProBook 430


HP EliteBook 830


HP EliteBook 850


HP Thunderbolt Dock G2


 他にも、手のひらサイズながら多くのコネクタと高い拡張性を備え、アームと組み合わせればさまざまな利用が可能な「HP ProDesk 400シリーズ G3 DM」、最大で13時間稼動可能な大容量バッテリーやWake on Lanといった教育機関が求める仕様を満たすコンバーチブルPC「HP ProBook x360 11 G2 Education Edition」、特に学校の先生にヒアリングした課題を解決する、A1からA4までの拡大・縮小機能、USBからのダイレクト印刷も可能な教育現場に最適な圧倒的低価格でコンパクトな大判プリンター「HP DesignJet T830 MFP A1」など、豊富なラインアップを用意していることを紹介した。


HP ProDesk 400 G3 DM


HP ProBook x360 11 G2 Education Edition


HP DesignJet T830 MFP A1


●サイバーレジリエンスを埋め込み、被害を最小化するHPのPC

 多数のメディアで報じられている通り、情報セキュリティの脅威は増加の一途をたどっている。先に奥野氏が紹介した4.2秒どころか、最新の状況では3.8秒に1個といったペースで新しいマルウェアが出てきており、「アンチウイルスソフトを入れて、1日に1回くらいのペースで定期的にパターンファイルをアップデートしていても、それではちょっと間に合わないくらいだ」(日本HPパーソナルシステムズ事業統括クライアントソリューション本部 大津山隆氏)という状況だ。

 しかも近年では、PCを破壊してしまうような攻撃も登場している。PCが1台破壊されただけでも、OSを一からクリーンインストールするとなると、ほぼ一日仕事。「もし感染力の強いウイルスで、100台、1000台といった単位でPCが破壊されると、事業が何週間も止まることになる」(大津山氏)。たとえ自社は狙われないと思っていても、サプライチェーンでつながる取引先に影響が及ぶリスクがあることに注意が必要だとした。


 これに対し日本HPでは「ここ2年ほど、サイバーレジリエンスという考え方をPCに埋め込むというアプローチでセキュリティに取り組んでいる。感染しにくくなるよう壁を作りつつ、同時に感染したときに早く元に戻せる仕組みも含めて考えている」と大津山氏。さらにBIOSなどOSの下のレイヤを狙う攻撃が出てきていることを踏まえ、「下のレイヤのハードウェアからサイバーレジリエンスの機能を組み入れ、感染しづらく、しかも感染しても素早く元に戻って被害を最小化するような端末を作るのが、HPの基本的なポリシーだ」と強調した。


 そして、デモ動画を交えながらHPのPCが搭載するさまざまなセキュリティ機能を紹介。中でもユニークなのは、EliteシリーズとProシリーズに搭載されている「HP Sure Click」だ。マイクロバイザーと呼ばれる仮想化技術を活用し、Webブラウザのタブ1つ1つを隔離された仮想環境で動かすことによって、マルウェア感染経路として最も多いWeb経由の感染に対処する。


 「たまたま悪意のあるサイトにアクセスしてしまっても、隔離されている仮想マシンごと消してしまえば、そのマルウェア、そのブラウザのセッション、仮想マシンが全部消えてまるでなかったことになり、本体には波及しない。一個一個細かくケアしなくても済み、まるで使い捨てコンタクトレンズのように使える」(大津山氏)


 また全PCが搭載している「MBR/GPT Security」は、Master Boot Record(MBR)やGPTのコピーを取得して、システムフラッシュの安全なエリアに保存しておく仕組みだ。万一破壊的なランサムウェアに感染し、MBRやGPTが破壊されても、コピーから書き戻すことで何事もなかったかのように起動できるため、「非常に簡単な機能だが効果は高い」という。


 さらにEliteシリーズは、OSの下のレイヤであるBIOSを監視する専用チップ「HP Endpoint Security Controller」を搭載しており、より高度なセキュリティをPC単体で実現する。


 例えば、OS上で動作するセキュリティソフトでは検知できない不正なコードがBIOSに仕込まれても、「HP Sure Start」はHP Endpoint Security Controllerと連携してそうした改ざんを検知し、あらかじめ保存しておいた正しいBIOSで上書きすることで、常にクリーンな状態で起動できるようにする。また「HP Sure Run」は、同様の改ざん検知・復元機能をOSレイヤにまで適用するもので、「OSが搭載するセキュリティ機能やサードパーティのウイルス対策ソフトを止めてから悪さをするマルウェアがあっても、HP Sure Runが強制的に再起動して元に戻し、常にOSの防御機能がオンになっているようにする」という。


 「HP Sure Recover」は、マルウェア感染によって再インストールするしかない状態に陥ったときに、速やかにPCを復元できる機能。大津山氏は「MBRやBIOSまで含めて元に戻す作業は1台でも大変だが、組織的に感染して何十台、何百台になると事業に影響が生じる。HP Sure Recoverはそうした作業をネットワーク経由で自動的に、人手と時間をかけずに行える」とし、「最後の砦」的な機能だとした。


 HPのビジネスPCが搭載しているこうしたセキュリティ機能は、インターネット分離の運用で悩む自治体にも、また教育委員会にも適用可能だという。特にHP Sure Clickは、「ブラウジングの使い勝手を変えることなくセキュリティを向上できる」とし、必要以上に使いにくい環境にすることもなければ、ネットワークの仕組みに手を入れたり高額な投資を行ったりすることもなく、インターネット分離とほぼ同じ効果を実現できる。こうした機能をうまく生かすことで、PC本体を単なる価格勝負の材料とするのではなく、顧客満足度を高めるソリューションとして活用できるとした。

●自治体や教育機関でも活用可能なワークステーション

 最後に、日本HPワークステーションビジネス本部の大橋秀樹氏が、ワークステーションのラインアップを紹介した。


 ワークステーションは、3D CADや解析ソフトといったパワーを必要とするアプリケーションの動作に最適なマシンだ。HPは長年にわたってこの市場に、最先端の製品だけでなく専任チームやサポートを投入し、海外はもちろん、国内でも高いシェアを保ってきた。最新のラインアップ「G5」は、大津山が紹介したHP Sure Startといった最新のセキュリティ機能にも対応している。


 ワークステーションは長年、製造業のようなコア市場で活用されてきた。HPはさらに、デザイナー向けに2-in-1タイプをリリースしたり、背負えるバックパックタイプを製品化したりするなど、「変わり種」も含め、さまざまな用途に特化したモデルを開発している。


 これらは、従来ワークステーションとはあまり親和性がないと見られてきた公共・文教といった市場にも適用可能だ。1つは、先進分野に取り組む人材育成を担う専門学校や大学・大学院だ。競争の激しいAIやディープラーニング、機械学習といった技術に率先して投資し、人材輩出に取り組んでいる教育機関にマッチするのではないかと、大橋氏は説明した。


 またVRも、製造や建築業界だけでなく、自治体への提案も十分可能性があるという。自治体が運営する科学館や教育センターの体験コンテンツとして常設したり、今は存在しない城や過去の街並みなどをVRで再現し、観光用に活用したりするなど、様々な展開が期待できる。

●ぜひパートナーロードショー 2018にご参加を

会場にはセッションで紹介されたPCをはじめ、特長ある製品やプリンターが展示されている。もちろん、展示コーナーでは実際に製品を手にとって操作したりできる。気になった製品については、HPスタッフがデモも交えて詳しく説明をしてくれるので、積極的に質問してほしい。


セキュリティを中心とした提案ポイントから最新デバイス情報まで、案件提案に役立つ情報盛りだくさんのパートナーロードショー 2018。セッションでは動画を効果的に織り込むことで、わかりやすく印象的な内容になっている。 セッションはもちろん、展示コーナーでは製品の解説を聞きながら実機に触れることで、明日のビジネスに活用できる即戦力情報を得られるまたとない機会である。


今後、パートナーロードショー 2018 は、福岡(7月10日)、沖縄(7月13日)、浜松(9月7日)で開催を予定されている。ぜひ、最寄りの会場にご参加いただきたい。 申し込みはコチラから。


日本HP Partner News 2018年6月26日号 特集記事]
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