1月13日、報道関係者向けに2017年の日本HPの事業説明が開催された。各事業分野の取り組み、今後発表予定の製品、本社内に新設されたショールーム、カスタマーウェルカムセンター(CWC)の紹介などが行われた本事業説明会の様子をリポートする。

●浸透中の「Keep Reinventing」を製品で証明する


代表取締役 社長執行役員
岡 隆史 氏

 報道関係者向け発表が行われた日本HP本社の会議室には各業界の記者が多く集まった。まず、日本HPとして目指すビジョンや事業戦略についての岡隆史社長によるプレゼンからスタート。


 岡社長は分社化後に新たに掲げた企業ブランドのコピーフレーズ「Keep Reinventing」について「先進のテクノロジーで革新を続け、世の中をもっと便利にしていくという意味が込められています」と説明。「Keep Reinventing」の方針は社内で浸透してきたとし、「外部に向けてはこの方針の具現化を製品で証明していきます」と意気込みを語った。



 そして、ものづくり企業として「世界初」に挑み続けたHPの歩みを振り返った。1939年にウォルトディズニー社に採用された世界で初めて白熱バルブを使用したオーディオ発振器から、いまや幅広く普及しているインクジェットプリンターやポータブルPCまで、革新的なものばかりだ。
 続けて「我々の製品は、ユーザーの皆様が直接使用する製品だからこそ、魅力的な製品でなければ、事業は成立しません。ですから我々は、製品そのものの魅力を追求していきます」と、目指す方向性を語った。


 さらに「世界で一番製品品質に厳しいと言われる日本市場での展開をする企業として、開発段階から日本のお客様の視点をとりいれるとともに、日本で要求される高いサービスレベルを実現していきます」と、日本のユーザーへの最適化を目指すとともに、HP全体の価値向上にも寄与していく方針を示した。

●コア事業と成長事業の両輪で「勢い」を加速させる

 現在の事業環境に対しては、法人向けデスクトップやワークステーション、シンクライアントなどHPの得意としてきた分野では引き続き業界をリードする中、ノートPCについても大きく成長し、日本HPが市場を大きく上回る成長を続けていることを示した。「PCやOSのリプレイスサイクルだけでなく、働き方改革という社会的な背景もあり、業界全体として伸びていくことは間違いありません。業界全体が大きく伸びるチャンスにあるなか、もともと『勢い』のあるHPは、それをさらに加速させます」と今後の展望を語った。


 そして、分社化後に取り組んできた工場移転による物流拠点の統合や社内IT整備によるビジネスインフラの最適化に触れ、さらに事業展開のスピードを加速していくとした。
具体的な事業展開にあたっては、事業分野を「コア」、「成長」、「将来」の3つに分類。PCとオフィスプリンターを中心としたコア事業に関しては、HP独自の強固なセキュリティなどを強みとして挙げながら、「HPの製品がもつ優位性をお客様やパートナー様にきちんとお伝えしながら、事業の基盤となるコアビジネスの裾野を広げていきたい」と抱負を語った。


 成長事業に関しては、昨年発売した1台でスマホ・PC・タブレットとして活用できる「HP Elite x3」や今年春頃に発表予定の3次元データを扱うワークステーション「Sprout Pro by HP」などに言及。
 また、プリンティング事業における成長分野としてデジタル産業用印刷機に期待しており、大きな投資を実施することを表明した。
 そして、将来事業として今期発売予定の3Dプリンターについては、すでにヨーロッパやアメリカでは実用化へ向けて動いており、今後HPとしても、自社製品用修理パーツの製造に3Dプリンターを利用する可能性を示唆。最後に先進テクノロジーによる革新を目指して活動していくことへの決意を改めて表明し、締めくくった。

●デバイス中心からワークプレイス中心のソリューションへ


パーソナルシステムズ事業本部長
兼 サービスソリューション事業本部長
九嶋 俊一 氏


 続いて、PC事業の取り組みを紹介するために、パーソナルシステムズ事業本部長兼サービスソリューション事業本部長の九嶋俊一氏が登壇。同氏は2017年を昨年から取り組んだイノベーションを継続するための2年目と位置づけたうえで、「デバイス中心からワークプレイス中心のソリューションの提供へとシフトします」と大きな方向性を示した。


 そして将来の働く環境づくりへのアプローチとして挙げられたのが「WORKFORCE(働く人々)」「WORKPLACE(働く場所)」「WORK STYLES(働き方)」という3つの視点だ。




 1つ目の「WORKFORCE(働く人々)」については、世界的に見ると2020年には従業員の50%がデジタルネイティブでスマホを使いこなす「ミレニアル世代」が占めることに着目。このような世代が求めるより高性能でスタイリッシュなデザインのデバイスを提供していくとした。


特にイノベーション元年と位置付けた昨年については、デザイン面での革新が中心だったという。このデザインイノベーションについては、2006年、2011年、2016年におけるノートPCの薄さを比べるために示された資料を見るとわかりやすい(【資料図】)。


 2006年は薄さ34.5o、重さ1590g(2510pモデル)、2011年は同32.8o、1670g(2560pモデル)だったノートPCが2016年発表モデル(Folio G1)では、同12.4o、970gと、10年で64%薄く、39%軽くなり、短期間で全体デザインの方向性が大きく変化したことがわかる。


 2つ目の「WORKPLACE(働く場所)」については、人々がカフェや自宅など、会社以外の複数のより開かれた場所で働くという世の中の流れとともに、オープンな場所になるほどセキュリティ面の脅威にさらされる危険が増える点に着目。そのような状況に対応する、高いレベルの管理とセキュリティが実現できるようなソリューションに取り組むとした。


 セキュリティ脅威に関しては、毎分2789件のデータが使用不能にされる・削除される・盗まれるなどの被害に遭っているというデータや、全体の37.5%の企業が被害に遭ったという総務省実施のアンケート結果を挙げ、「今後、ファームウェアへの攻撃の増加が予測されており、非常に大きな脅威となっています」と、警鐘を鳴らした。


 

 そのうえで、HPとして「世界で最も安全で、管理性に優れたビジネスPCを提供する」と宣言。既存デバイスで実装してきたBIOSレベルのセキュリティ(HP Sure Start)や、クライアントレベルのセキュリティ(HP Client Security Suite)を拡張していることに触れた。


 また、新規のセキュリティ機能も紹介。サーバーやスマホでPCをコントールできるユニークなものだ。この機能を実装したモデルでは、スマホから一定距離離れたPCを自動的にロックしたり、サーバーからPC自体をフルコントロールすることが可能だという。

●オフィスを変革していく新商品を順次発表予定

 3つ目の「WORKSTYLES(働き方)」に関しては、仕事における「コラボレーション」にかける時間の増加に着目。全体の仕事時間の43%が会議などのコラボレーションのために使われると言い、その効率化をITインフラの面から支援する考えを示した。


 このコラボレーションに対応する象徴的な製品も紹介された。それが1月16日発売された会議専用PC「HP Elite Slice」だ。


 まず、コラボレーションの場となる会議において、電話や会議システムを利用しようとすると設定などで平均約12分かかるというデータから、もし60分の会議だとすれば20%が無駄な時間に使用されており、全体の仕事時間に対して換算しても約9%(43%の会議のうち20%)が無駄になると指摘。


 それに対し、会議用に最適化されたHP Elite Sliceは、直観的なインターフェイスによって、この設定にかかる時間を最小限にできるとアピールした。大きなポイントは、ボタンを押すだけで、Skype for Businessに30秒で参加でき、同様の外部ボタンで音量調節も可能という点だ。


 そのほか、ミーティング自体の効率を上げるための工夫も紹介された。たとえばケーブルなしでの画面共有や、オンライン会議で重要な音声品質の向上などだ。収音範囲5mのマイクと360度スピーカー、ノイズキャンセリング機能によって、会議室のどこにいても収音しクリアに音声が伝えられるという。


 コラボレーションに対応した製品は今後も発表する予定があるとのこと。九嶋氏は「オフィスを変革していく新製品を順次出していきます」と意気込みを語った。

●成長著しい産業用の印刷機市場で最大のラインアップ

 説明会の最後は、デジタルプレス事業本部長の小池亮介氏からプリンティング事業についての発表。フォーカスされたのは、産業用印刷の分野だ。たとえば切手、カタログなどの出版物、壁紙や商品パッケージなどである。



デジタルプレス事業本部長
小池 亮介氏

 「産業分野には大きな印刷市場があり、莫大な投資をしてきました。そして現在、産業印刷分野の中で、最も幅広いラインアップをもっているのがHPです」とアピール。その背景として、昨今の印刷業界の業界再編にさきがけること10年以上前、HPは2000年前後から事業再編を行い、新しい技術とソリューションを開発してきたことを説明した。


 そのなかでイノベーションの柱として挙げたのが「インクジェット」「液体トナー」「3D」の3つで、今回は3D以外の2つの点に焦点が当てられた。


  まず、1970年代からHPが手掛けてきた「インクジェット」技術に関しては、2005年〜10年にかけて出した産業用途の「HP Latex」がエポックメーキングな製品だったと振り返り、技術変革のポイントとして、PageWideテクノロジーに言及した。


 PageWideテクノロジーの大きな特徴として、インクヘッドを複数並べることで、(従来のようにインクヘッドを動かすのではなく)紙を動かして印刷する手法によって印刷速度の高速化を実現していることや、オフィス用と産業用途のテクノロジーの共通化によってスケーラビリティを確保している点を挙げた。


 

 2つ目の「(紙だけでなく)いろいろなものに印刷できる」という開発コンセプトの「液体トナー」は、30年前からこの技術開発をしていたイスラエルのIndigo社を2000年初頭に買収して以降HPとして取り組んできたことを紹介、その長い歴史に裏打ちされた技術だと説明した。

●HPプリンターならではの強みが評価された事例が続々

 そして「インクジェット」「液体トナー」の両技術がどう使われているかの事例が紹介された。それぞれ、採用の大きなポイントとなったのは、「厳しい環境基準をクリアしている」「高品質かつ高速」「(大量印刷の需要に対し)1枚ずつ違う内容を印刷できる」という3つの点だ。


 まず、壁紙の印刷で全面採用されたサントリー美術館。同美術館では、来館したお客が快適に過ごせるように、臭気が発生しない壁紙印刷の技術を求めており、HP Latexが、「GREENGUARD(グリーンガード)」のGOLDを取得していることが採用の決め手となったという。


 

 GREENGUARDは、室内環境に関するグローバル基準で、GOLDは病院や学校などで利用できる程度の最も厳しいレベルでの認定となる。この基準を満たしたHP Latexのインクであれば、内装に全面的に使用される壁紙であっても臭気が発生しないのはもちろんのこと、人体にも影響が出ないというわけだ。


 プレゼンで示された溶剤系のインクとHP Latexインクでの実験写真を見ると、その違いは明らか。溶剤系のインクを利用した印刷対象の裏面に凹凸ができて紙がゆがんでしまったり、溶剤系インクをいれた発泡スチロールが溶けてしまっている。それに対し、HP Latexインクでは印刷対象も発砲スチロールも、変化が起きていない。


 2つ目の事例は、海図印刷の用途でHP PageWide プリンターを採用した海上保安庁。常に変化している海図を迅速に校正し現場に配布するための印刷機として、A1の大型サイズを毎分30枚印刷できるという同機の特性が高く評価されたのだという。


 3つ目の事例は、イベントやキャンペーン用のラベル印刷にHP Indigoデジタル印刷機を採用した日本コカコーラ。キャンペーン用のボトルすべてに違う絵柄を印刷して配るというニーズに対し、「1枚ずつ違う内容の印刷ができる」というHP Indigoデジタル印刷機の特性が最大限に活かされた事例といえる。


 同様に、イスラエルのチョコレート会社が、400万種類もの違った絵柄でチョコレートの包み紙を印刷した事例も紹介された。本事例では、同時に折り紙コンテストキャンペーンを実施、複数買いが増え大きく売上が上がったという。



   

●小ロット印刷や段ボール市場に大きなビジネスチャンス

 そして、今後の成長分野として、出版業界などで使用される高速インクジェット輪転機の市場にも言及があった。世界で高速インクジェット輪転機によって2016年に印刷された累積頁数は約600億枚頁以上(レターサイズ換算・地球と月21往復分の距離に相当)と、10億頁規模だった2010年に比べて大幅に増えたという市場拡大に関するデータを紹介。
HPの高速インクジェット輪転機も講談社に続き、昨年カドカワでの採用が決まったといい、小池氏は小ロット印刷に対する今後の出版分野での需要拡大に期待を滲ませた。


さらに、2017年の大きなビジネスチャンスの1つとして、コルゲートインクジェット輪転機による段ボール市場への参入を宣言した。コルゲートインクジェット輪転機とは、約3m幅の段ボールを毎分約200mの速度で出力できる超大型の印刷機のこと。この段ボール市場においても、シリアル番号や広告などで、1枚ずつ違う内容を印刷する需要を見込む。
 そして、小池氏は「様々なブランド様と連携して、消費者の皆さまに新しい価値を提供し、イノベーションを起こしていきたい」と抱負を語った。

●実機が見られるデモルームと新ショールーム、カスタマーウェルカムセンター

 プレゼン終了後は、プリンターのデモルーム(イメージング アンド プリティング・ソリューションセンター/以下IPSC)と新たに設けられたショールーム(HPカスタマーウェルカムセンター 東京/以下CWC)で、当日説明のあった実機の一部についてデモンストレーションが実施された。


 本社1階にあるIPSCには、普段見ることのない大型の印刷機などが展示してある。当日は、3.2m幅の印刷を可能なHP Latexから1.6m幅の鮮やかなポスターを2枚同時出力するなど、説明会で言及されたマシンによって実際に印刷する様子が披露された。
 なかでも、海上保安庁で採用があったHP PageWide XL8000プリンターから超高速でカラーの垂れ幕が印刷された際には、そのスピードに記者陣から感嘆の声が上がった。
 また、デジタル印刷機によって、1枚ずつ違う絵柄を印刷するデモンストレーションでは、1枚の絵柄から様々な画像を作り出すHP独自の「HP Mosaic」という技術に関する説明も行われた。


当日、本社4階に新たに開設されたCWCでは、奥に設けられたセミナースペースで、会議用PC、「HP Elite Slice」に関するデモンストレーションが実施された。実際の会議の様子を再現しながら、同機の使用方法に関する説明が行われた。このセミナースペースは同様のデモンストレーションのために使用されるという。CWCセンター長が語るCWC見どころと活用方法は特集Aで詳しくご紹介。




「特集②:カスタマーウェルカムセンター (CWC)オープン!センター長 インタビュー」をご覧ください。


 新たな製品群や新設されたショールームとともに、日本HPの意気込みや新ビジネスの可能性を大いに感じさせるものとなった2017年の日本HP事業説明会。2017年、パートナーの方々も日本HPとともに新たなビジネスチャンスを掴んでいただきたい。

日本HP Partner News 2017年2月28日号 特集記事]
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