Windows 10のリリースから約1年。その後の導入状況や評価とともに、大企業だけでなくSMB(中堅・中小企業)カスタマーに対する販売チャンスにつなげるためのポイントを日本マイクロソフトで伺った。

●最速で移行が進むWindows 10、企業の検討要因のトップ3とは


日本マイクロソフト株式会社
コンシューマー&パートナーグループ
OEM統括本部 マーケティング部
部長 河野 万邦氏

 Windows 10がリリースされたのは2015年の7月29日。それから約1年3か月がすぎ、現状の導入状況について、「ワールドワイドにおける導入デバイス数は4億台を突破しました。歴代OSと比べても最速で移行が進んでいるというデータからも、手ごたえを感じています。今後、はやい段階での10億台突破を目指しています」と話すのは、日本マイクロソフトのコンシューマー&パートナーグループOEM統括本部のマーケティング部で部長を務める河野万邦氏だ。

 移行の速度はStatCounter※の統計を見るとわかりやすい。同サイト(OS別ブラウザアクセス集計・10月時点・日本)によると、Windows 10のOSシェアは、15年10月時点で8.1%に過ぎなかったが、1年後には、30.4%とプラス22.3ポイントの伸び。一方、Windows 7は同48.7%から33.1%(マイナス15.6ポイント)へとシェアを落としており、順調にWindows 7からWindows 10への移行が進んでいることがうかがえる。

 では、Windows 10導入を検討する企業が重視するポイントとはどんなものだろうか。マイクロソフトが実施したアンケートによると、1位は「セキュリティ」(67.2%)。後述するが、Windows 10では、生体認証を含めたセキュリティ面での機能向上が著しい。その点は企業も多いに評価し興味を示していると見える。

 2位は「Windows as a Service」(62.6%)。つまり、Windows 10から今後、最新のWindows 10に無償でアップグレードされるという点だ。

 3位は「使い慣れた操作性」(55.8%)。Windows 8でなくなったスタートメニューを復活させるなど、Windows 7と同様のUI(ユーザーインターフェース)が提供されていることが、導入に対する大きな検討要因となっている。



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※StatCounter:http://gs.statcounter.com/#desktop-os-JP-monthly-201510-201610

 

●「互換性への不安」のカベを乗り越えた先にあるチャンス


日本マイクロソフト株式会社
OEMマーケティング部
パートナーレディネス担当 佐藤 実氏

 こうしたWindows 10の特徴の理解が進むとともに、日本マイクロソフトの大企業カスタマーでは87%の企業が導入検討中になっており、順次採用される状況となっている。一方、SMBは大企業ほど導入が進んでいるというわけではないようだ。その大きな要因の1つが、互換性に対する懸念だ。

 日本マイクロソフトがSMB(同社はパソコンが250台以下の企業と定義)に対して行ったアンケートでは、Windows 10を導入していない企業の最も大きな理由は「互換性」で70.6%に上る。また、「導入してほしいサービス」としても「互換性検証サービス」(62.9%)が1位となっている。

 それに対し「Windows 10は従来のOSに比べて高い互換性を有しています。オンラインで利用できる互換性検証ツールも用意しているので、ぜひ利用していただきたいと思います」と話すのは、OEMマーケティング部でパートナーセールスレディネス(販売/導入の準備支援に関する活動)を担当している佐藤実氏。

 実際、高い互換性を実証した導入事例もある。たとえば1000台を超える学生向け学内PCをWindows 10搭載のPCにリプレースした関東某私立大学。

 同大学では、履修届といった学生とのやりとりを各種ソフトウェアによって実施しており、その数は53にもなる。Windows 10への移行に際して、この53のアプリが問題なく動作したことが、導入の決め手の1つとなった。

 同様に、全面的にWindows 10搭載デバイスの導入が進んだ近畿地方の某市役所においても、Windows XPやWindows7ベースで稼働していた既存システムとの高い互換性が評価されたことが採用につながったという。

 「このような高い互換性をご理解いただき、ぜひ導入の検討をいただきたいです」と両氏は力を込める。日本ではSMBの数が全体の95%以上を占める。そして、社内PCにおけるWindowsのシェアが97%以上に上るということからも、これらのパイをとれれば大きい。

 

●切り込みの一手は、新デバイス起点で提案するワークススタイル変革


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 ではどのような提案が有効だろうか。それについて「デバイス起点のワークスタイル変革によるアプローチがもっとも提案しやすいと思います。そのなかで、当社が『モダンPC』と位置づけているデバイスは訴求力が高いと見ています」と河野氏は話す。

 同社で定義するモダンPCとは、2in1型PCやウルトラスリムノートPCのように、「高いデザイン性(Cool Design)」を持ち、タッチペン入力や生態認証、音声認識といった「新しい経験(New Experience)」、さらにCPUやバッテリーライフなどにおける「性能向上(Better performance)」を兼ね備えたWindows 10搭載PCのことを指す。



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 このようなモダンPCを中心にWindows 10搭載の新デバイスの利点に着目した導入が各業界で進んでいる。そして2017年にかけては、2in1型PCは前年度比でウルトラスリムノートは+9.1%、2-in-1デバイスでは+2.5%の伸びが予測されており今後も伸びが期待できる分野だ。

なかでもWindows 10搭載の新デバイスの導入が顕著に進んでいる業種を、河野氏は3つ挙げる。まずは金融業。顧客と接する窓口や法人営業の業務と、入力が必要な業務を新デバイスの1台で済ませるというのが典型例だ。

 たとえば、北陸地方の大手地銀では、全行員2400人に2in1型PCとWindowsフォンを配布。法人営業など社外に出た際も社内と同様の生産性を保つというのが導入の狙いだ。結果、客先でのモバイルワークを実現したほか、社内でも自席の場所を定めず仕事をするフリーアドレス化ができ、生産性が大きく向上した。

 「営業マンを中心に、iPadなどのタブレットとノートPCの2台持ちが進みました。このインプットとアウトプットを2in1型PCの1台に集約することでコストは下がり、生産性は上がります。さらに、Windowsフォンなどのモバイルデバイスと組み合わせることで、さらなる生産性の向上が見込めるのです」(河野氏)。

 快適な2in1型PC利用は、Windows7のUIを踏襲したデスクトップモードと、タッチ操作が快適なタブレットモードを自動で切り替えられるWindows 10だからこそ、実現したことでもある。

 

●新デバイスによる「新しい経験」が生産性向上に直結する

 残りの2つは製造業と小売業だ。製造業で多いのはタブレットを中心に現場の状況をリアルタイムで把握しながら、本部との円滑なコミュニケーションを図るために利用されるケース。小売業では、店舗端末とPOSシステム、オムニチャネルシステムなどが連携する入口としての活用が進む。

 新デバイスの導入によって通常業務のオペレーションを刷新する事例もでてきている。たとえば、某中古買取サービスでは、店頭の査定から本部確認や登録といった業務を、新デバイスの導入によって一元化。同時に社内データベースも整備し、業務効率を一気に改善した。

 これら特定の業界以外にもタッチペンなど「新しい経験」の活用も進んでいるという。たとえば出版業界では、校正用PDFに対してタッチペンで電子的に赤字を直接いれる運用が標準化されつつある。またタッチペンの利用に関しては、業界を問わず、部下が作成したパワポ資料へ電子的に赤字をいれて、そのままメールで返すといった運用が重宝されているのだ。

 

●Windows7時代から激変したサイバー攻撃の脅威に対応

 そして、このような新デバイスの特徴を生かした提案の一方で同社が力をいれているのが、セキュリティ面における訴求だ。

 前述のとおり、Windows 10導入の検討要因としては「セキュリティ」が1位で67.2%ともっとも高くなっている。SMBに限っても2位、64.9%と高い数値を示している。


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 背景として、「Windows 7が出荷されたころは、Webサイトの改ざんなどいたずらレベルのものが大半でしたが、現在は標的型攻撃に象徴されるように、企業が持つ情報を狙われているものが多くなっています」と、Windows 7時代に比べると現在はセキュリティリスクが高まっていることがあると佐藤氏は指摘する。

 警視庁のホームページ※を見ても、2015年に警察が連携事業者などから報告を受けた標的型メール攻撃は3,828件で過去最多とある(2013年は492件)。標的攻撃の典型的なパターンは、重要な通知になりすましたメールからWebサイトに誘導し、悪質なアプリが実行されてマルウェアに感染するというもの。



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 「以前より非常に巧妙で、ある程度の警戒心をもっていても誘導されしまうケースが増えています」(佐藤氏)と言い、自社は大丈夫だろうと思っている人ほど危ない。


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 たとえば、ある人事部長宛てに送られたメールタイトルは「派遣先の講ずべき措置についてのお知らせ」。「労働者派遣業関係事業の適用要綱の適用の確認のためご連絡しました。中身はリンク先にあるので見てください」などと書かれており、もっともらしい内容だ。

 このメールのリンクをうっかりクリックしてマルウェアに感染してしまうと、PC自体のログイン情報のほか、企業にとって大事な個人情報がいとも簡単に抜き取られてしまうというわけだ。

 新聞を騒がす膨大な量の個人情報の流出による損害事件のほか、最近では、盗んだ情報に対し「身代金」を要求するといった悪質な犯罪も増えており、セキュリティ対策は喫緊の課題なのである。

※警視庁HP:http://www.npa.go.jp/kanbou/cybersecurITy/H27_jousei.pdf

 

●4つのセキュリティフェーズに完全対応し、米国国防省で採用

 ではセキュリティ対策とは具体的にどのようなものなのか。指針の1つとなるのが、セキュリティ攻撃の効果を下げるための4つのフェーズ。「防御力の向上」「検知・分析」「被害軽減」「事後対応」だ(米国の国立標準技術研究所による定義)。



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 これらの各フェーズに対し、Windows 10は高いセキュリティ機能によってすべて対応していることが大きな強みとなっている。

 たとえば、「防御力向上」の面では生体認証がある。また、「検知・分析」においては、感染を感知する管理ポータルを搭載。「被害軽減」のためには、資格情報の保護機能が備わっており、「事後対応」に関しては、ファイルの自動暗号化の設定が可能だ。これらは一例にすぎず、セキュリティ機能の充実ぶりについては、Windows 7と比較すれば明らかだ。



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 これらのセキュリティが評価され、日々、サイバー攻撃と戦うアメリカの国防総省で全面採用。日本国内でも、高いセキュリティレベルが要求される某メガバンクで採用に至った。前述した近畿地方の某市役所や関東某私立大学などの事例においても、強固なセキュリティ機能はもちろん導入要因の1つとなっている。

 ただし、「SMBの方たちはセキュリティ対策を他人事ととらえがちかもしれません」と佐藤氏は現状の課題を話す。



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しかし、企業にとって、情報漏洩が致命傷になるのは事実。また、「昨今では中小企業を大企業への侵入窓口として攻撃を仕掛けるという例も見られます。そのため、取引先へシステム監査に入る企業も出てきます」(同氏)という。

恐怖心を煽れというわけではないが、セキュリティ対策の重要性とそれに対応したWindows 10の機能を正しく理解してもらうことが、移行への足掛かりとなりそうだ。

 

●Windows 10の価値を伝えるべく全国行脚中!事例構築も進める

 今後の提案について、河野氏は「新デバイスによるワークスタイル変革が『攻めのIT』とするならば、セキュリティからのアプローチは『守りのIT』。ぜひこの両面からご提案をいただければと思います」と呼びかける。

 そして目下の課題は、これらのWindows 10が提供する価値がまだ十分に伝わっていないことであり、そのために価値を広めるための活動に力を入れているという。

 象徴的な取り組みの1つが、今回とりあげたようなWindows 10を法人向けに販売するためのポイントを中心とした情報発信やトレーニングを行うセミナー/イベントだ。

 今年はすでに「ジャパントレーナーカンファレンス」を全国5か所で実施、マイクロソフトのパートナーや、リセラー、ディストリビューターなど2000人弱が集まった。もちろん、日本HPとの協調イベントも実施中だ。

 また、リアルイベントに参加しづらいパートナーのために、同内容のオンライン化を進めている。

 さらに、今回紹介したものも含め、より多くの導入事例を作成し共有を図りたい考えだ。 「事例などを通じてパートナーさんに『勝ちパターン』を知っていただきたい。日本HPとの協業を通じて、責めと守りの両方の面から、ぜひみなさんとビジネスチャンスをつかみたいと思っております」と河野氏は意気込む。


※記事中でご紹介した事例の詳細は、マイクロソフト様Webページ等でご覧いただけます。

 Windows 7は2015年1月にメインストリームのサポートがすでに終了、2020年には延長サポートも終了する。また、日本マイクロソフトでは、法人向けデバイスは、来年から2019年に向けて新たな成長ステージに入るという予測を立てている。

 日本HPパートナーも、Windows 10導入のツボを押さえることで、この移行期に、上手にビジネスチャンスをつかんでいただきたい。

日本HP Partner News 2016年11月22日号 特集記事]
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