今年6月、日本HPの「東京生産」を担っていた工場が東京都昭島市から日野市へ移転、「日本HP東京ファクトリー&ロジスティックスパーク(以下、新工場)」として稼働している。今回は昭島工場時代から工場見学ツアーを担当している日本HPサプライチェーンオペレーション本部の斉藤勝代氏の案内に基づいてこの新工場内部をリポートする。今後、新工場においても見学ツアーが予定されているので、ぜひ本記事を参考に参加をご検討いだきたい。

●多品種・少量(変量)生産によって、完全受注生産を実現

 新工場が入居する施設(三井不動産ロジスティックスパーク日野)はJR中央本線の豊田駅から約1.8kmの場所に立地。2万9500坪の広大な敷地をもつ本施設のいちフロアに上がり、まっすぐに続く長い廊下にあるドアを開けると、そこには新工場の製造現場が広がっている。


 

製造工程は、アセンブリ(組み立て)のラインからスタート。工場は完全受注生産で、製品構成が日々変わるうえ、生産台数をその日の受注数にあわせて変動させる必要がある。それに対し、新工場では昭島工場と同様、「フレキシブルワークフォース」と呼ぶ、稼働状況に合わせて作業者を増減させる方式をとっており、ラインの数も日々変更する(ライン数は、取材当日8本だった)。

各従業員は、日々変わるさまざまな製品の作業に対応、さらに2シフト・昼夜切れ目のない生産体制によって、昭島工場をしのぐ生産能力を誇っている。ラインの長さは約6メートル、7人前後の担当者がその前に1列に並んでいる。この「ショートライン」と呼ばれる短いラインは、1人が複数の作業に対応することで実現している。

「見学にいらしたみなさんは、製造ラインが短いことに驚かれます。日本工場では、1人の担当者が複数の作業を担当できるがゆえに、このような短いラインにできるのです」と斉藤氏。 そして、このように多品種・少量(変量)生産かつ、複数の作業に対応できる担当者がいることが、「東京生産」の強みであるという。

 

●人為的ミスを防ぐためのチェック体制

 アセンブリラインではまず、筐体の外観をチェックし、受注製品の仕様と紐づいた製品ラベルを貼る行程から始まる。工場で生産するモデルは約40種類だが、1台1台カスタマイズで注文を受け付けているプロセッサやメモリ、HDDなどの構成の組み合わせは数十万通りにもなる。最初に貼る製品ラベルについているバーコードがこの1台1台の製品仕様書に紐づいており、作業やチェックのよりどころとなる。


 

 次は全体の作業に必要な部品をそろえる工程。1人がバーコードを読み込んで画面の仕様書のリストを見ながら、必要な部品をひと通りそろえる。そのうえで別の担当者が、部品に記されたバーコードを1つひとつ読み込み、仕様書どおりの部品がそろっているか、間違いがないかをチェックする。

このようなチェックの仕組みについて斉藤氏は「単純作業を連続して続けていると、思い込みなどによるミスが起きてしまうことがあります。そのためこのように、人の作業に対しては必ず、機械的なチェックを加え、人為的なミスを防ぐようにしています」と説明する。

 部品がそろったらいよいよ組み立て。前述のように、組み立て作業は細分化されておらず、2〜3人程度の少人数で行う。そして、アセンブリの最終工程はチェック作業。部品や組み立てに間違いがないか、改めて別の担当者がチェックする。このように何重ものチェックで作業工程を確認し、人為的ミス発生をふせぎ品質向上をめざしている。

なお、このアセンブリにおける一連の工程はコンベアーによる流れ作業によって行われている。1人当たりの作業時間を一定になるようにあらかじめ計算して作業を割り当てており、作業の無駄がなく最短の時間で作業できるようになっているのだ。

 さらに、作業用のパレットは終了したら下の段に流し循環させるなど、工程の工夫によって効率化を実現している。

 「以前は、積みあがったパレットを人が運んでいましたが、現在の2段式にすることで、その手間を省けるようになりました」(斉藤氏)。工場内にはほかにも現場の改善事例がいくつも掲示されている。このような細かな改善の積み重ねが、高い生産性を支えているのである。

 

●自動試験と人による試験を組み合わせたテスト工程

 アセンブリ工程が終了すると、プリテスト(初期動作試験)にはいる。この工程ではまず、モニター、キーボード、マウス、電源コードやネットワークケーブルなど一式をPC本体に接続。そして、ネットワークを介して、サーバーから必要なハードウェア・ソフトウェア構成情報、診断プログラムのインストールが行われる。

 続けて、対面式のテストを実施。テスト担当者は画面の指示に従って、USBポートやSDカード、各種メディアが挿入できるか、指紋認証ができるかといった、人の手作業や目視確認などが必要な動作チェックを行う。 PCのスピーカー関連が正常かを確認するテストもこの工程だ。その際、確認のために発せられる音声はピーといった無意味な発信音でなく「1」「2」といった意味を持つものとなっている。それに対し、テスト担当者はその音声に応じたキーボードを押下することで、正しい音声を認識したことを確認する。

 「単なる音だと、空耳で本当に聞こえていなくても反応してしまうなど、間違う可能性もあります。ですから、意味のある音声を使って、正しく認識したことを確実に確認するようにしています」(斉藤氏)。ここでも人為的ミスを防ぐための対策がとられている。

 プリテストが終了するとラインイン(連続動作試験)に入る。ここでは高負荷テストなど、人手を介さない機能検査を行う。この検査は、ワークステーションなどハイスペックなマシンに対しては、10〜12時間ほどかかるケースもあるという。そのため、ラックごとに終了時間が記されており、その時間をめどに担当者が状態をチェックし、次の梱包工程へと運ぶようになっている。


 

 

●製造の最終仕上げは、梱包と抜き取り検査

 続く梱包工程では、PC本体のクリーニングと外観検査をしたうえで、付属品と併せて梱包する。付属品を挿入する手順は組み立て工程と同様だ。つまり、まず1人がバーコードを読み取って必要な付属品を確認・用意をした後、次の担当者が1つひとつの部品のバーコードを読み取って、間違いがないかを電子的にチェックするようになっている。

 また必要な書類やシールもこの場で印刷され、同時に封入する。ひととおり梱包が終了したら、一部の抜き取り検査の製品を除き、倉庫へと運び込まれることになる。


 

 抜き取り検査は、お客様の使用環境に近い検査を実施する。たとえば、外付けデバイスとの接続認識、マイクとスピーカーによる録音再生、といったお客様が通常使用する場合に想定される内容だ。さらに、荷重テストや耐震耐久テストなど、物理的な負荷テストもここで行われる。

 このテスト基準は、業界のなかでも最も過酷と言われているといい、このテストによって培われたノウハウは世界中の工場でシェアされている。

 

●物流を直接連携して迅速なデリバリーを実現!

 こうしてひと通りの工程を経て完成した製品は、いよいよ出荷を待つばかり。出荷は国内配送業者と、倉庫内で直接連携している。

 配送業者と連携する作業場では、工場と配送業者の担当者が並んで荷物の受け渡しを行っている、まず、日本HPの担当者が製品についたバーコードをリーダーで読み込み、機械から出力された配送業者で使用する出荷ラベルを貼りつける。

ここから先は配送業者側の作業だ。そのラベルバーコードをリーダーで読み込んだうえで、トラックへ積み込まれ、全国へと出荷されるわけだ。このようにお客様のもとへ迅速で正確なデリバリーを実現しているのである。


 

 「工場を新しくするにあたり、国内に複数あった拠点を一箇所に集め、生産と物流を統合しました。それにより安定した製品供給と円滑な配送を可能にしています。(斉藤氏)。

 

●モチベーションUP!「ものづくり」の現場を体感できる工場ツアー

斉藤 勝代氏
サプライチェーンオペレーション本部
斉藤 勝代氏

 新工場でもこれまで紹介した工程を見学できる、販売パートナー様向けの工場見学ツアーを実施する予定だ。

 従来昭島工場でも同様の見学ツアーを実施しており、好評を博してきた。「普段販売している製品が実際につくられていく様子を見て、感動した、販売のモチベーションが上がった、自信をもっておススメできる、といったお声をいただくことが多く、わたしたち工場で働くみんなにとっても、大変励みになりました」と斉藤氏は振り返る。

 さらに新工場では新たに「カスタマールーム」を設置。実際に製造された製品を展示するなど、より工場見学を楽しめる新たな試みも盛り込む予定だ。

 「カスタマールームでの展示だけでなく、工場見学のルートに見学者のみなさまの理解をより深めていただけるような工夫をするつもりです。そして、さまざまな製品やその製造工程を間近にご覧いただける“ショーケース”にしたいと思っています」と斉藤氏は工場見学ツアーに対する意気込みを語る。

 

工場ツアーの概要や申し込み方法については下記Webページから。
●日本HP東京ファクトリー&ロジスティックスパーク見学プログラム
http://www.hp.com/jp/factory_tour
販売パートナーの皆さまにはぜひこのプログラムを利用して、営業活動に活かしていただければ幸いである。

近藤 和豊氏
サプライチェーンオペレーション本部
本部長 近藤 和豊氏

東京ファクトリー&ロジスティックパークの責任者である近藤より、パートナーのみなさまにひとことご挨拶です。

 日本HPはグローバルのスケールメリットを日本でも活用し、さらに精度の高い安定したオペレーションを目指します。
工場の移転に伴い、国内に3つあった拠点を(工場・倉庫)を統合しました。物流網と生産効率を改善した事で安定した製品供給が可能になります。
世界一厳しい目を持つ日本のお客様のご要望にお答えするために私たちは東京生産にこだわっています。
パートナーのみなさまにはぜひ、ご自身の目でご確認いただき、自信をもって販売いただきたいと考えています。
見学会へのご参加を、心よりお待ちしております。

全セッション映像公開中。ビジネスに役立つ情報満載!
動画はこちら

日本HP Partner News 2016年10月25日号 特集記事]
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